2012年09月03日


◇ユーザーの同意カギ


 ヤフーが今月、メールの中身を解析して広告を表示する「メール広告」を導入することで、インターネット広告が再び高成長市場となることが見込まれている。メール広告は米グーグルがGメールですでに導入済みで、他の広告手法に比べ効果が高いためだ。メールサービスで国内最大のユーザーを持つヤフーの参入で定着する可能性もある。ただ、通信の秘密に関わりかねないだけに導入には慎重なIT企業もあり、普及のためにはユーザーの事前同意など慎重な準備が必要となりそうだ。

◇無駄な配信“除く”


 「ウェブ閲覧よりもメールの方が実際に個人の興味を反映しており、メール広告は今後のネット広告の中核になる」。メールを解析することが電気通信事業法の「通信の秘密」に抵触する恐れがあるとして、総務省と折衝を重ねてきたヤフーの別所直哉最高法務責任者は、メール広告の有効性をこう強調する。

 ヤフーによれば、2006年からメール広告を導入しているグーグルでは、メールや検索連動など各種広告を依頼した広告主へのサイト訪問者を調べたところ、半数がメール広告を見た人だったという。

 メール広告は、個人のメールのタイトルや本文を機械的に解析。そのキーワードに関連した広告を表示する仕組み。ディスプレイ広告や、サイトの検索結果から興味のある分野の広告を表示する検索連動広告と同じ「インタレストマッチ広告」と呼ばれる。

検索連動広告は、対象者の興味を効果的に把握でき、広告効果が高いとして、ウェブページの一部として埋め込まれているディスプレイ広告に比べ高い伸びを示している。電通の調べによると、2011年は2194億円と5年前から2.4倍に増えている。メール広告が普及すれば、近いうちにディスプレイ広告を抜くとみられる。

 メール広告は現在、国内ではグーグルのみが導入しているため、別所氏は「ネットビジネスの根幹を海外事業者に奪われかねない」と危惧する。ヤフーにとって広告事業は、今年4~6月期決算で売上高の55%を占める430億円と収益の柱となっており、メール広告の導入は広告事業拡大のため不可欠という事情があるようだ。

 国内メールユーザーが約1200万のグーグルに続き、約1700万の最大手のヤフーがメール広告を導入すれば、他社の追随も予想される。メールを解析できれば、不要だったり無関係な広告が表示されなくなるという利用者側のメリットもある。



◇“覗き”に不快感も


 ただ、導入には慎重な向きもある。SNS大手ミクシィの荻野泰弘経営推進本部本部長は「メールを見るのは人と連絡を取るときなので、購買行動に直接つながるのか疑問が残る」とその効果に懐疑的な見方だ。「電気通信事業法に抵触するかどうかに関わらず、利用者はメール解析を不快に感じる可能性が高い」という理由もある。

 このため、ヤフーに続く動きが出るのは「法改正された後になるのではないか」(業界関係者)との声も出ている。

 ネットサービスではグーグルの地図サービス「ストリートビュー」が、世界のどこでも地図上の光景を写真で見られるというメリットがある半面、勝手に写真を撮影されることによるプライバシー侵害の問題をもたらしたように、これまでも相反する特性を持つものが多く、メール広告もその一つといえる。

 メール広告が利用者に不快感を持たせないためには、メール解析に対するユーザーの事前同意と、容易に広告を拒否できる仕組みが必要だ。ヤフーには、国内最大のポータルサイトとして信頼を損ねないような仕組みが求められる。